6/23/2025

傘のフクマ nakaban新作

 


Photo: Daigo Fukuma


雨の季節。
広島の「傘のフクマ」では、しゅんしゅんさんや立花文穂さん、僭越ながらわたしなど、広島の画家とのコラボレーション傘が制作されている。

まず、上の写真。
ブルーの方が日傘「青い庭」
これは「Tiny Courtyard」という題で販売されていた第一作目の模様をリミックスしたかのような色変りバージョン。日傘と書いたが雨傘としても使用できる。

もう一方は日傘「版画」
ブルガリアの弦楽器Tambouraの古楽器バージョン(マニアックすぎる)の図柄が見えるが、イチジクの葉っぱや抽象的なパターンなどさまざまな版画を一面ずつあしらっているリッチなモノクローム傘。こちらも同様に雨傘として使用できる。

そして下の写真のペールブルーの傘、こちらは「Early Morning」(下の写真)。
旅先での早朝を表現した。

この「Early Morning」の美しいページが作られているので、リンク先をぜひごらんいただけたら嬉しい。→

傘「版画」「青い庭」もitemページに掲載されている。

6/05/2025

4. Juin







今日は広島の幟町、MioBarに大きな絵を届けた。

ここはオープン以来幾度となく通っている好きなイタリアン・バール。
遠方から友人が来たら、じゃあMioBarに行こうかと考える。
でも、今ではすっかり人気店になってしまい、予約なしにはなかなか入れない。

わたしは自分は絵を描いてます、ってあんまり他人に言わない。
でもやっぱり…と、あるとき店主、宮西さんに自己紹介代わりに「ランベルマイユコーヒー店」を差し出したところ、その場で絵の制作を頼まれた。

店を改装するから現在の店の様子を描き残してくれないか。
客もスタッフもみんなこの空間が好きで、思い出がいっぱいだから、絵に描いて残して欲しい。
え、変えるの?と驚きお店をあらためて見渡した。
その内装は現地の街角のバールのようでとても居心地が良かったが、店主はもっとやりたいことを追求したいから、思い切って全改装に踏み切るのだ、とのこと。

それから2年くらい経ち、改装も出来上がって絵を届けることができた。
とても喜んでくださった。
わたしはドアを開けて、お店がかなり変わっていたのでびっくりした。ダークウッドや大理石、漆喰などがふんだんに使われ、重厚でかっこいい。
生まれ変わった店内に、このMioBarの過去の様子を描いた絵が飾られることはたしかに意味のあることだと思った。

何んでも美味しいお店で、そしてコーヒーも絶品。
宮西さんはイタリア現地のバリスタのコンテストで優勝するようなお方。
広島に来たらぜひこのMioBar行ってみて欲しい。
そしてその絵もご覧になっていただきたい。笑


5/19/2025

19. Mai

 



森まゆみさんの本「野に遺賢をさがして」のカバーの絵を担当させていただいた。
著者の森さんの旅を思い浮かべ油彩で描いた。
文化人類学的フィールドワークのような、出会った遺賢たちの聞き書きのような、旅日記のような。
こんな旅ができたらいいなあと思う。

装丁の多聞さんの丁寧な仕事。
絵の要素と文字の関係、直感なのか、考えぬかれてるのか。おそらく両方。
カバーをとると絵は同じだがクラフトペーパーの別のデザインになっていてこちらも素敵。

「野に遺賢をさがして ニッポンとことこ歩き旅」
著: 森まゆみ
装丁: 矢萩多聞
刊: 亜紀書房


5/15/2025

本日21時から。

東京の西荻窪のURESICAで現在開催中の展覧会、植田真 × nakaban の “parallel stamps” の作品群がURESICAの Web shopに掲載される。

購入もいただけるが、丁寧に撮影された作品画像が並んでいるので、ご多忙な方や遠方で来られない方、わたしたちの作品を展覧会気分でご覧いただけたら嬉しい。

URESICAのショップ

5/10/2025

10.Mai

 

本の轍さんでの展示は明日まで。
庭、風景、旅。土を連想しながら制作した画の連作を展示していただいている。

いろいろな土地で土を手に乗せてみる。石が砕けてできた砂や雲母片、枯れた植物や動物の死骸などの有機物、貝殻のような有機物と鉱物の中間のような存在、炭化した木の組織、苔類の粉末、陶片や貝殻などの存在に気づく。
旅人に土の一握りを大切に袋に入れて旅をする心情があっても不思議ではない。なぜなら土はその土地の貴重な情報を折りたたんでいるからである。その土を異国の地に撒けば、言葉にはならないかもしれないが、何かしらの意味が生じるはずである。
その土は、この世界の真の多数派である大量の微生物の棲家である。無数の微生物が呼吸をしてついには風を起こし、木々を揺らしているのがこの世なのかもしれない。
また絵具というものも広義にとらえると土のようなものである。
それを塗るという行為はとてもプリミティブで、スピリチュアルな、ある意味時間を超えていることだ。
表現も大切だが、その前にそのような裏打ちがなければならないと考えている。


nakaban個展『Soil from other land.』
会 期:2025年4月24日(木)〜5月11 日(日)
13:00〜19:00(CLOSED 4/30 , 5/7)
会 場: 本の轍(松山市 春日町13-9 春日ビル2F)

5/08/2025

8. Mai

 



大きい画を受注でパネルをつくる。
クランプはいくつ買ってもなぜか足らなくなる。
四方に支え枠をつけて、中心にも支えを一本つけ、できあがり。
支え枠の材が少しでも反っていたらNGで、真っ直ぐに乾燥されたものを使用しなければならない。






ホームセンターに行った時に思い立ち、葡萄棚を作った。
ビニールハウスのフレームの19ミリ径最小ユニットでキューブを作り、スクリューメッシュの柵2枚を天面に乗せるとサイズがぴったりだった。両者の固定には銅のワイヤーを使用した。
今かかえている仕事群がひと段落したらキウイ棚も作りたい。

5/01/2025

1. Mai (展示本日から)


久しぶりのURESICAでの展示、楽しく設営させていただいた。
シャビーな木の作業テーブルに描いてきた絵を並べ、植田さんとそれらを入れ替え差し替え、いつもとはまた違う趣の額に納める。
緊張感のある作業の連続で、終わった後のおさけの美味しかったことといったら。

ちなみに今日はURESICAの開店記念日でもあるので!祝いましょう。

4/29/2025

29. Avril

明後日5月1日から、東京西荻窪のURESICAで植田真さんとの二人展がはじまる。

明日は前日で搬入日なのだけど、URESICAで植田さんとお互いに見ていない作品を広げ、
即興的に組み合わせと題名の言葉を作っていく。それがいちばん楽しみなのだ。
多くが 2 in 1でひとつの作品となる。
タイトルは"parallel stamps" とした。
切手サイズに凝縮された画を対位法的に併置して、驚きの組み合わせを。

1日は植田さんと在廊させていただきます。ライブもあります。

4/27/2025

27. Avril

 



本日も本の轍へ。

移転オープンされたばかり。とても賑わっている。お店のロゴマークは福田さん。
外壁の看板にはVan Morrisonの No Guru, No Method, No Teacher.という言葉。

4/26/2025

26. Avril

松山。早起きして船に乗ってやって来た。

観光港からてくてく歩いて伊予鉄に乗る。

素晴らしい電車からの眺め、ミカンばたけ、カラスノエンドウやケシの花。

潮風にさらされた板を纏った家屋。いいところ。

光の質感の違いがより「南」を感じさせる。


というわけで、今日から二日間「本の轍」に居ます。ぜひどうぞ。


4/22/2025

22. Avril

 





松山の本の轍に送った絵の一部。
荷は無事に瀬戸内海を渡ったようだ。

タブロー制作はしばらく時が開いたので(別のお仕事をしていた)
ちょっと制作気分も変わったのか、絵の雰囲気まで変わったような気がする。

絵の話以外のことだが、額の木の部分、今回自分で製材した。
板を薄く加工するのはとっても大変なのだが、このたび設備が整った。
わっぱの弁当箱とかギターとか、薄くした板をさらに曲げてあってすごい技術だと思う。

4/19/2025

nakaban EXPO『Soil from other land.』



nakaban個展『Soil from other land.』

会 期:2025年4月24日(木)〜5月11 日(日)
13:00〜19:00(CLOSED 4/30 , 5/7)
会 場: 本の轍(松山市 春日町13-9 春日ビル2F)

或る土地に別の場所からの土を混ぜ込むことを客土という。
これは最近のわたしの好きな言葉で、絵を描く時もよくこの言葉を思い浮かべている。
発想や絵の具を混ぜ混ぜしながら完成を目指す絵画と、庭や畑での終わりのなさそうな土づくり。
これらはとてもよく似ている。
条件が整えば、時を置けば置くほどその土は呼吸を続け良くなっていくように、しばらく飾っていただくことで、
じわじわ良くなっていく絵。それがわたしの制作目標だ。
そのようなわけで、誰かの暮らしへの客土のように絵を提案できたらと思っている。
words by nakaban

新店舗のこけら落としは、画家・書籍の装画や絵本作家として活躍されているnakabanさんの個展です。
呉の海沿いにある小さな町のアトリエで、絵を描くのと同じように勤しむ花や果実を育てる庭づくり──。
近年のテーマとして取り組む「土」や「円環」といった言葉は当店名の轍にも通じるところがあり、
そんな「客土の旅」が感じられる絵が並びます。
昨年の夏に訪れたnakabanさんの庭にはたくさんの無花果に柿の木、小麦に大きなアーティチョークの花まで咲いていて、
それはもう素晴らしい風景でした。

4/26〜27は作家在廊予定あり。
4/27 には、nakabanさんがご愛飲されている呉市の伝説の焙煎店「深やき珈琲そにろき」の出店も予定しています。

四国では初となる展示です。
”じわじわ良くなっていく絵“を、ぜひあなたの日常に迎えていただけると嬉しいです。

link > 本の轍

***


いつも直前になってしまいまして、ごめんなさい。
わたしにとってはじめての場所「本の轍」での個展。愛媛県松山市。
仕事場のある呉の友人「深やき珈琲そにろき」さんからのご縁で展示の機会をいただいた。

昨年のブラックバードブックスでの展示に続いて、自然、庭をテーマに描いている。
今回は特に客土という言葉を思いながら描いている。
でも絵の具も土みたいなものだから、何を描いても(結局)よし。
ステートメントにも書いたけれど、飾って飽きない絵を問いながらひとつひとつ描いていきたい。

4/17/2025

「めいすい」





浄水器で知られるMeisui社の広報誌「めいすい」の表紙の絵。

記事のほとんどはこちらの公式サイトで読むことができる。





4/13/2025

12. Avril

 






春になってツバメが戻ってくるころ、ミツバチの巣箱が騒がしくなったら分蜂の兆候。


巣箱の表面がミツバチだらけの真っ黒になる。

ミツバチを見慣れていない人が見たらびっくりしそうだ。

この時、ミツバチは巣分かれの見送り集団と出発集団に分かれるようだ。

出発集団は巣箱の近くの木や軒下に塊を作り、しばらくそこでモゾモゾして、そこから新天地へと飛んでいく。

これを見送るのもいいが、養蜂をする人たちはその塊を丸ごと捕まえて、巣箱を増やしていくわけである。


梯子をセットして、群れたミツバチの近くで待機する。

枝にとまった蜂の集団がスイカのように丸くなって、枝から垂れ下がってくる。

そして機を見て虫取り網でその塊を掬い取る。

この塊の状態は、一見恐ろしいのだが、実際はミツバチたちはおとなしい状態なのだ。

だが、その塊を網に掬い取ればミツバチはさすがに驚いて、大騒ぎになる。

すかさず網の口をダンボールでおさえ、雑に蓋をする。

ぽろぽろと隙間から蜂が逃げていくが、そのまま網を新しい巣箱の場所に運び、

巣箱の脚の部分、(説明が難しいが、木や鉄でできた天板のないテーブルにようなもの)に網を載せる。そのときまだダンボールは被せたままだ。

ミツバチでいっぱいの網の上に巣箱の最上段を被せる。

日本ミツバチの巣箱はただの空洞の枠を重ねているものなのだが、この巣箱のトップだけにはスノコ構造の空間が開いた蓋があり、そこが新しい蜂の巣の起点になる。


蓋をしていたダンボールをゆっくりスライドさせて抜き取る。

すると、ミツバチたちは網の部分から被せた巣箱へと昇っていく。

ミツバチは暗いところに集まる習性があるのだ。

この集団の中に女王蜂がいないと失敗だ。(実はわたしは先日失敗している)


しばらく待って空っぽになった網をそっと取り外し、代わりに巣箱の出入り口部分のパーツを台に乗せ、その上に蜂でいっぱいの巣箱のトップを載せる。

さっそく出入り口付近にミツバチが出てくる。

そのミツバチが、出入り口で羽根をバタバタさせている。

女王蜂のフェロモンを周辺に撒き散らして、外を飛んでいる後発の仲間を呼んでいるのである。

すなわち、女王蜂がこの巣箱に収まっているということを表わす。


ミツバチは新しい巣の周りを惑星のように周回して位置情報をチェックする。

そのとき、そばで観察しているわたしもチェックされる。

もちろん刺されるということはない。


一日経っても蜂が逃去していないのでこれで分蜂は完了。

というわけでミツバチ が二群になった。


追記>

その後逃げられ、また捕まえ、また逃げられ、また捕まえた。


4/12/2025

EXPO: "parallel stamps" nakaban + makoto ueda




parallel stamps

 0 2 5 年 5 月 1 日( 木 )~ 5 月 1 9 日( 月 ) open 12:00~19:00 火・水休み

nakaban / 植田真、2014 年に開催された展覧会 「夜明けまでにはまだ時間がある。」から 11 年── 切手やポストカードをモチーフにしたあらたな試みを どうぞお楽しみください

live event:

「手紙は夜更けにやってくる」 nakaban(lightbox)× makoto ueda(guitar)

5 月 1 日(木)17:30 入場/ 18:00 開演 2,000 円(未就学児無料/小学生半額) 定員 30 名/事前予約制(uresica.net で販売)

URESICA

〒167-0042 東京都杉並区西荻北 2-27-9 03-5382-0599 
www.uresica.com

4/02/2025

2. Avril

 


彩の国さいたま芸術劇場のフライヤー(年間公演ラインナップ)に絵を描かせていただいた。デザインはGOATの柳沼さん。
今年度ずっと劇場に置いていただけるのが嬉しい。
早朝のプロムナードを思い描きながら制作。
見かけたらぜひいちまいお持ち帰りを。


2/16/2025

16. Février

北極の冷たい空気が天体の回転の遠心力であふれて、ときおり日本の上にかかる。
それで冬がさらに冷えているようだ。
キッチンのオリーブオイルもすっかり固まってしまった。
他人事のようだが、この時期、制作する絵も灰色のものが多い。
自分には珍しくある仕事で映像を制作している。

梅はまだ咲かない。去年より1ヶ月以上遅れている。
ミツバチが何匹か寒さに脱落して死んでいる。
それでも巣箱の中で丸く塊を作って暖めあっている。けなげだ。
この丸い塊全体が本当に一つの生命体のようである。

年が明けてから果樹をたくさん植えた。
洋梨、プルーン、ネクタリン、アーモンドなど。
果樹は超密植になってしまった。
ほぼバラ科なので、虫にやられたり病気になってしまうかもしれない。
南国系果樹のチェリモヤやロンガン、アセロラは面白そうだから植えてみたが寒さで枯れてしまう。レモンも先端部がきびしい。
香りコニファーのブルーアイスを数本植えた。ブルーアイスは何本あってもいい。

この庭、去年は棘のある野苺を取り除いていたが、今年は
つる日日草を抜いている。つる植物はぐるぐる巻きにすると枯れる。
逆に巻かないと陽に晒しても青いままでずうっと枯れない。これが不思議だ。

2/08/2025

8. Février



ここ数日の雪で電車やバスが停まってしまう。
寒いし、あれほど好きだった雪が憎くなる。(しばらく仕事場に行けていない)
でも立ち止まってみると、やっぱり雪や背景にひろがるブルーグレーは趣があって、寒さの手のかじかみなども案外悪くない。

目的やコストだけを見て生きることは幸せな生ではない。
そのことは思い出すには空白の時間を趣と捉え、かつ楽しむ余裕が必要だ。
しかし、そのためには多くの鍛錬や条件が要求される。

今いるこの世界のルールは、人々が趣を楽しむということをできないようにデザインされていると断言できる。システム側から見ればひとは単なる導電装置の中の粒子であり、ロボットや部品ですらない。

表現者としての自分を観察すると、政治情勢に無関心なふりをしながら、そのシステムでいいのか、とか、こういう心の扱いは良くないのではないか、とその作品に精一杯の余白を流し込み、遠回しな形で「過程」にある趣の大切さを世間に伝えているように見える。この状態で足踏みしていることが悔しくて、でもその先は見えてこない。

でも、まずはこの状態がわかっているかどうかが大切で、そうでもなければ、飼い慣らされているまま、そのまま終わってしまう感が半端ない。

2/04/2025

3. Février

 

マチエールは漆喰。以前より下地に何かを使うことが増えた。
庭の土や灰も使うことがある。
ストーブから取り出した炭でドローイングをするのも面白い。
表面に凹凸があると何もない状態より描き始めやすい。

この冬の光源の中で捉えておきたい気配がある。
まだ春は来てほしくない。

1/15/2025

トークイベントのお知らせ

2月8日、東京の青山ブックセンターでトークイベントが行われる。

この「まど・みちおの絵本」シリーズでわたしが担当したのは「水はうたいます」という作品。
編集者の松田素子さんとたくさん議論してつくった自分的大満足の作品。
その後続刊される作品もどれもすごくて圧倒される。
いつかこの画家さんたちにお会い/再会してみたいなあと思っていたところ。
東京にいらっしゃる絵本好きのみなさま、このまたとない機会。ぜひどうぞ。

****

2月8日 夕方6時(開場5:30)から
場所:東京の「青山ブックセンター」
「まど・みちお没後10年記念 まど・みちおの絵本シリーズ  スペシャルトークイベント」を開催します。 

登壇者は、ささめやゆき nakaban   あずみ虫 きたむらさとし 
の画家4名。松田素子が編集者として司会をつとめます。 

1/14/2025

14. Janvier


この冬。なんだか埋めもの?のような作業ばかりしている。すうすうと風が入ってくる壁の隙間を木やパテで埋め、空いた庭の穴(狸が掘った)を川から運んできた砂で埋め、自分の歯を歯医者さんに埋めてもらった。

絵を描くスイッチが入らない。のでまずはパネル作りをする。たてものの修繕用に買った材が結局パネルになっていく。電動工具が吐き出した木屑をブロワーで飛ばす。最近これが楽しみ。

ある日、あまりに冬の山がきれいなので山に入ってみた。
それでいろんな発見があったので気に入って、ほぼ三日に一どのペースでどこかの山に入っている。
この辺の山のふもとは全て墓地になっていて、その参道の奥に道が続いていて神社があったり、荒れ果てた登山道に入り口があったりする。

この町でこれらの墓を通り抜けて山に入っていく変なひと、わたししかいない。
地元の人に聞くと「昔はみんな山へいっとったけどねえ、今ごろは山は怖いけえー」という。松茸とか獲れるらしい。
山はあまりにも無人で、その結果降り積もった葉っぱで道はふかふかでベッドの上のようだし、道自体が崩れてなくなっているところもある。
人が通らなくなると道は消滅する、と当たり前のことを思った。

最近は植物の中でも椿が好きで色々研究していたが、山には野生の椿がたくさんあって嬉しくなる。鹿のツノとかも転がっている。アトリエに飾ったらかっこいいかなあと思うが拾う勇気がない。それより薪になりそうな枝を集める。
わたしの絵本、「トラタのりんご」のように廃業の果樹園が山中にたくさんあることを知った。棚田式になっているが石垣も崩れかけている。柑橘類は皮が厚いので動物も食べない。

この冬は西日本はいつもより暖かくもあり、雪が降らない。でもこれを小春日和って呼びたくなるわけでもないような違和感がある。
ミツバチは冬眠してたのに、暖かい冬のせいかまた働き始めている。このまま春になってしまって大丈夫なのだろうか。