野草社の淺野さんより「五月の風」を送っていただいた。
予想以上の厚みに驚く。
風に吹かれ、陽の光を浴びて、明るい。
だからこそ不思議なあの切なさを感じずにはいられない詩集だ。
でも、山尾三省さんの詩集なのに真っ先に若松英輔さんの解説を読んでしまう。
若松さんの書かれるものはきっと単なる解説ではなくて、特別なものになっているに違いないからだ。
解説では、絵のための原稿読みのとき、通り過ぎるように読んでしまっていた一つの詩が採り上げられていた。
それは「いってらっしゃーい」という詩。
なんて深い読みなんだろう。すごかった。
*
なにか考え事をしている時、三省さんの詩を読むと、よい言葉が心に当たりヒントを与えられることが少なくない。その先は結局じぶんで考えなくてはいけないのだけれど、それをそっと促してくれるような。
僕が今好きだなと思うのは、本書に収められた「キャベツの時」という詩。
親しみやすく、わかりやすい、畑のキャベツの「巻き締まる時間」に思いを馳せる詩だ。
これはとても大切な詩になりそうだ。
大人の時、子どもの時、虫の時、キャベツの時、ボールペンの時、コーヒーの時。いろいろな時があるということを忘れてしまうと、なんだか心が干からびてしまう。
悩みという程のではないけれど、自分は視野ならぬ「時野」が狭まっているなあと、ちょうどそういうふうなことを考えていたものだから。