2023年の暮れに星野智幸さんと100年後えほんシリーズの一冊が作れるかも、と絵本編集者の筒井大介さんから連絡をいただいて、それから楽しみにしていて、送っていただいた最初のテキストを読んだとき、すごい絵本になりそう、と思いながらも、このテキストをどうやって絵本にしたらよいのかと途方に暮れた。わたしとわたしでないものの境界は、本当はないのではないか、すべてはひとつなのか。でもこの世界には多様な生物が活動していて、身振りと言語があり、文化がある。それはなぜなんだろう。そんな大きなテーマがありそうだ。でもこの絵本での星野さんの語りかたはとても無邪気で思わず笑ってしまう感じ。
やはり絵にすることがむずかしくて行き詰まっていたときに、星野さんから「ひとでなし」というその当時最新の小説を送っていただいた。知らなかった誰かの人生を早回しですべて見せられてしまったような体験をして、圧倒されてしまった。誰にでもなれて、何歳のそのひとにもなれなければ書けない作品。分厚いこの本を読み終えて、何か不思議な気持ちのまま絵本の絵のラフの仕上げに取り掛かった。
絵巻のように一気に駆けていく絵本になりそうだった。「だまされ屋さん」の絵を描いた時とはまた違う感じ。疾走感ばかりではいけないので、漫画のようなコマ割りのアクセントを入れた。絵に鉛筆の跡をのこしたり、ミスで擦れてしまった絵の具の跡をそのまま残したり、ノイズ感を出してみた。絵にも喋らせたかった。この絵本にはアリや梅、死骸、サラリーマン、猫、キノコなどの発するさまざまな言葉が交響している。絵の言葉もあるよ、ということをこっそり言いたかったのかも。だって絵本だから。















